先日の女子高生失踪事件で現れた黒衣の怪人について調べるために俺達は聞きこみをしていた。目星はついていた。天羽だ。エヴァンゲリオンでいうところの渚カヲルのような雰囲気を纏ったあいつが犯人に違いない。俺は渚カヲルが嫌いだ。あいつが出てからエヴァンゲリオンはつまらなくなった。フィフスチルドレンは洞木ヒカリにするべきだった。
お前がやったんだろう、答えろよ、答えなければ、お前がいつも教室の隅で隠しながら読んでいるライトノベルのタイトルをクラス中にばらす。
俺が問い詰めると、天羽は顔を苦悶するように歪ませながら、その場を走り去ってしまう。地下鉄エクス線の駅の方向だ、追うぞ。
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地下鉄に乗り込むと、そこには黒衣の怪人がいた。今日の俺は黒衣の怪人が怖くなかった。なぜなら、あいつの正体は天羽だからだ。だが、俺達は黒衣の怪人のデスハウンドという生命力を吸収する技によって、コードブレイクの状態にされてしまう。
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コードブレイクになると、俺達が頼りにしているブラッドコード(ウシワカとかフウマとかのジョブあるいはペルソナのようなもの)能力が喪失し、コードから具現化した装備なども一切が消え、レベル1の状態で丸腰の一般人以下となってしまうことを俺達は初めて知った。
今回はブラッドコードがデスハウンドから俺達の身代わりとなって守ってくれたが、もし、コードライザーでなければ、俺達はあの技によって急老症にされ、今頃は老人の姿にされていたそうだ。
黒衣の怪人は俺達の前から立ち去ったが、俺達は追いかけることができなかった。
俺達はなんて無力なのだろう。俺達が必死に上げたレベルは全てバーチャルリアリティの世界の話でしかないのだろうか。俺達はコードブレイクと同時に「燃え尽き」を併発していた。燃え尽きの状態になると、特性値が低下し、瀕死及び滅化からの回復が100%失敗するようになるらしい。