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読んで遊んで沈んだ記憶

主に日記です。

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伊藤潤二恐怖マンガCollection[7] なめくじ少女 (漫画 伊藤潤二)


伊藤潤二恐怖マンガCollection (7)

収録されているのは『なめくじ少女』『漂着物』『黴』『寒気』『旅館』『うめく排水管』『バイオハウス』の7編。今までの恐怖マンガCollectionに比べると、ドラマ性よりも虫や怪物的な異形の不気味な醜さを表現したビジュアルを全面に押し出した作品が多く収録されている。
作者らしいセンスのある起承転結の作り方とシュールさは見事なのだが、『富江』などに比べると醜の要素だけで、二面性がなく、一本調子で押し切る形の作品ばかりなのが気になった。

表題作の『なめくじ少女』は、舌がなめくじになった少女がやがて全身を乗っ取られてしまう話。なめくじをなんとかしようとした両親によって少女は塩漬けにされるが、体が溶けてしまい、残った顔の部分を殻としたナメクジによってカタツムリ化してしまう。

伊藤潤二恐怖マンガCollection[6] 双一の呪いの日記 (漫画 伊藤潤二)


伊藤潤二恐怖マンガCollection (6)

恐怖マンガCollection[5]に続いて、双一シリーズが収録されている。[5]に比べると、兄弟間の愛憎の感情や、双一のお茶目な少年らしさがより剥き出しになっており、わかりやすくコメディタッチに仕立てあげられている。不気味さの中で必死に読者の笑いを取りに来る、作者と双一の努力が面白い。

本巻最後に収録されているエピソードには双一は登場しておらず、双一シリーズの中で登場した不気味な見た目の女性モデルにスポットライトが当てられたスピンオフ的なエピソードになっている。この女性、自分の感情の赴くままに気に入らない人間を食べたりして殺してしまう凶悪ぶり。見た目の不気味さと相俟ってなかなかの怖さで、双一の存在もちょっと食われているところがある。
実はこの女性、『闇の声』と『潰談 新・闇の声』に収録されている双一シリーズのエピソードにも登場している。闇の声に収録されているエピソードは双一少年の将来の姿で、双一がその女性モデルとの間に子どもをもうけるのだが、それが見事に双一と女性モデルをミックスさせたような不気味で獰猛な少年というものだった。もっとも、それは全て双一少年の夢の話だったという、夢オチがつけられているのだが……。

ただ、本作を踏まえて、『闇の声』『新・闇の声』内の双一エピソードを読み直してみると、双一が「男の子」のカリカチュアであったように、恐怖の対象であった女性との間に子どもを作り、女性から逃げ回っては自由気ままを求め、女性に見つかると恐怖に慄き、その度に尻に敷かれる暮らしに戻ってしまうという設定は、「男の子」から続く、「男性」へのテーマ性が見えてきて、より楽しめた。

伊藤潤二恐怖マンガCollection[5] 双一の楽しい日記 (漫画 伊藤潤二)


伊藤潤二恐怖マンガCollection (5)

今回の恐怖マンガCollectionは不気味な少年の双一というキャラクターが登場する作品がシリーズとして収録されている。これを読んで、闇の声新・闇の声に収録されていた双一が出てくるエピソードはシリーズものとしての実績があったのか、と心得た。

双一は不気味な見た目そのままに性格もひねくれており、呪いなどの超能力を使って様々なハプニングを引き起こし、周囲の人間に災いをもたらすのだが、自分の感情の赴くままに行動しているという少年らしい無邪気なところがある。
また、向けられた愛情に対してはひねくれながらも喜ぶかわいらしさを見せるシーンもある。おかしな祖母にかわいがられて育ったことでおかしくなってしまったという説明がされているエピソードがあるが、家庭環境は至って平凡で、親にとっては大事な子どもの一人として育てられているので、富江にあったような緊迫感や悲壮感がなく、常にどこかコミカルな感じがあるのがこのシリーズの作品の特徴に感じた。
孤独を好むが他人の事は気になる性格。インドアな田舎の少年のコンプレックスなどのオーバーな感情表現は「男の子」の難しさをうまくカリカチュアしていて、可笑しみがある。

伊藤潤二恐怖マンガCollection[4] 顔泥棒 (漫画 伊藤潤二)


伊藤潤二恐怖マンガCollection (4)

伊藤潤二のホラー漫画。
今回も6編の傑作漫画が収録されている。
人間社会とその中での感情のやり取りを風刺した身近に潜んでそうな闇がうまく演出されているところが作者らしく、また、全体的にシュールで、救いようのない結末になっている。どれも質が高い。

表題作の『顔泥棒』は、近くにいる人の影響を受けてその人そっくりに顔が変わってしまう少女の話で、少女に付き纏われ、振り回される周囲の人間達の視点から、その奇異な体質と奇行に対しての恐怖が紡がれている。
しかし、彼女も好きでその体質になったわけではなく、人より他人の影響を受けやすいのならば、美しくて良いものから影響を受けたいという思いからの付き纏いの行動だった。彼女は最後にはその体質を逆手に取られる。仮面ライダーなどのお面をかぶった者達に取り囲まれて、醜い顔に成り果ててしまう。

伊藤潤二恐怖マンガCollection[3] 肉食の怪 (漫画 伊藤潤二)


伊藤潤二恐怖マンガCollection (3)

伊藤潤二のホラー漫画。
[1][2]では富江をテーマにしたエピソードが収録されていたが、今回は特に定められたテーマはなく、様々な恐怖のエピソードが収録されている。ただ、それでも富江にあったような美と美への執着に翻弄されるエピソードが多いという印象はあり、[1]と[2]で富江を読んだ後に、同じノリですんなり入っていけるものに配慮されていると感じた。

話はどれも凝っていて、著者のストーリーテラーとしての確かな才能を感じさせてくれる高いレベルのものばかりで、面白い。
表題作の『肉食の怪』は、異常な美的感覚を持つ女が子どもにもそれを押し付けて虐待していたという話で、なかなかハードでビジュアル的にもストーリー的にもグロテスクでインパクトの大きいものになっている。
その他、首のない石膏像達が自分に首をつけるために人間の首を切り落とし、石膏像同士で争っているエピソードや、彼氏のために伸ばした髪を別れをきっかけに切ろうとしたら意志を持った髪に殺されてしまうというエピソードなど、人間の美、パーツへのこだわりを、ぞっとするような恐怖として巧みに描写しているものが収録されている。

伊藤潤二恐怖マンガCollection[2] 富江Part2 (漫画 伊藤潤二)


伊藤潤二恐怖マンガCollection (2)

伊藤潤二のホラー漫画。
富江のPart2ということで、恐怖マンガCollection[1]の続編的な位置づけになっており、収録されているエピソードはすべて富江が題材にされている。Part1が登場人物を共通させた続き物の話のタイプであるのに対して、Part2の今作は独立したエピソードの連作によって富江の様々な表情を追っている。

大胆な切り口や奇抜な発想などはPart1と同じだが、本作ではより富江という存在に迫っていて、科学的要素を付加させたSF的な趣向、富江同士の自分という存在証明をかけた殺し合いなどが面白い。

今まではなんとなく、富江という存在が我儘に振る舞い、男をたぶらかし、やがて男が富江という美貌に狂っていき、独り占めするために殺すというプロットにおどろおどろしいものは感じたが、あまりに富江の魔性が凄すぎて男側が霞み、彼らには下心への批判すら成り立たない、不可抗力でしかないので、男女の駆け引きに迫力を欠いているなと思っていた。

だが、本作では富江自身への追及がテーマにされており、彼女自身、極端な美と醜の両面を併せ持ち、男を惹きつけ、男に殺されることを余儀なくされる運命にあり、また、彼女は同じ「富江」との間で生存競争を繰り広げないといけないという「女性」という生き方のメタファーを強烈にグロテスクに体現した存在になっていて、凄みがある。

伊藤潤二恐怖マンガCollection[1] 富江 (漫画 伊藤潤二)


伊藤潤二恐怖マンガCollection (1)

伊藤潤二の代表的なホラー作品である富江シリーズが収録されている。
富江という妖艶な美少女が出会う男性を尽く惑わし、狂わせていく。やがて、富江に翻弄されて狂った男性達は様々な思惑から富江を最後には殺してしまうのだが、富江(という恐怖)はそのたびに蘇り、血や肉片から増殖し続ける、というのが基本的なプロットになっている。

富江という存在を中心に置きながらも、何人もの富江が存在するという設定なので、細かいことに囚われず、一話一話、趣向を凝らしたエピソードの中で大胆に様々な角度からの富江を扱っているのが面白い。モンスターホラーのような演出のシーンもあり、異性を巡ってドロドロのやりとりを繰り広げる少女漫画的な場面などもある。

まりあの夢に向かって第1歩 (漫画 みこくのほまれ)

まりあの夢に向かって第1歩 (ホットミルクコミックス 149)[アダルト]まりあの夢に向かって第1歩 (ホットミルクコミックス 149) [アダルト]

ちょっとぽっちゃり感のある丸みのあるかわいらしいタッチが特徴のみこくのほまれの初単行本。エロ漫画。
女子大生の主人公がAV女優として奮闘する。HシーンはあくまでAV撮影に絡んだシチュエーションがメイン。

AV業界のリアルな内部事情やどす黒さが描かれているわけではないのだが、主人公が観てくれる人を喜ばせるためにひたむきに頑張る前向きな姿勢が痛々しいほどで、作品のために主人公に性的にいたずらをしかけるAV制作スタッフとの間のやりとりと立場の違いに男女差を感じさせ、貫き通された明るさとエロ漫画然とした都合の良い女性像が、逆に性を売る事についてのきつい問いかけをしてくるようであった。
おまけ的に収録されている主人公の学生時代のレイプでのロストバージンのエピソードが、その後、AV女優になった主人公のあり方について、どこか堕ちた感じを抱かせ、それがまた本作を切なく、そして、いやらしくしている。

潰談 新・闇の声 (漫画 伊藤潤二)

潰談―新・闇の声 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)潰談―新・闇の声 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

伊藤潤二のホラー漫画。
闇の声の続編的な位置づけになっているが、ほとんどはやはり独立した単独のエピソードになっている。
ただ、全7編のエピソードのうち2つほど、前作『闇の声』のエピソードと直接的に話の繋がりと関連性のある話が収録されている。
「お化け屋敷の謎」のエピソードの話の続きで、前作で登場したお化け屋敷経営者の男双一の家族についてと少年時代が描かれている。快活で模範的な兄と対照的に根暗でひねくれた弟が家族を呪いによって奴隷扱いし、お化け屋敷を経営するというもので、引きこもりや家庭内暴力のメタファーを用いたホラーになっている。出来のいい兄との対照的な見せ方が露骨で、コンプレックスに対する共感も誘っている。

個人的に好きだったエピソードは、「幽霊になりたくない」で、背後霊を食べる少女と不倫関係になった男が少女によって背後霊を食べられていくうちに、運に見放されていくという話。因果応報の話の構成は、やはり面白い。背後霊を食べるというアイディアもさることながら、背後霊が如何に重要な存在として我々を守っているかという前提も考えさせられるものがあって怖かった。

闇の声 (漫画 伊藤潤二)

闇の声 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)闇の声 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)

伊藤潤二の最新刊! 恐怖の裏に人間の哀しみがある。恐怖の裏に生きるおかしさがある。ホラー、ナンセンス、シュール恐怖の名手が放つ新感覚のホラー連作! 恐怖があなたを追いかける。逃げろ! 逃げろ!! 逃げろ!!

(引用 amazon 闇の声 (眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)


伊藤潤二のホラー漫画。
一話完結のエピソードが7つ収録されている。それぞれの話は互いに関連性はなく、独立したものになっている。『ミミの怪談』のように実話系のノリのエピソードになっているが、こちらのほうが、よりエキセントリックでフィクション性が高く、その分、なんでもありな怖さはある。
どの話も人間の描き方がうまく、世界観の作り方と発想も凡人がついていけるレベルで奇抜に仕立て上げられており、何か間違いが起これば実際にありそうな、こちらを恐怖の闇の声が誘ってくる面白さがあった。

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