伊藤潤二恐怖マンガCollection (6)恐怖マンガCollection[5]に続いて、双一シリーズが収録されている。[5]に比べると、兄弟間の愛憎の感情や、双一のお茶目な少年らしさがより剥き出しになっており、わかりやすくコメディタッチに仕立てあげられている。不気味さの中で必死に読者の笑いを取りに来る、作者と双一の努力が面白い。
本巻最後に収録されているエピソードには双一は登場しておらず、双一シリーズの中で登場した不気味な見た目の女性モデルにスポットライトが当てられたスピンオフ的なエピソードになっている。この女性、自分の感情の赴くままに気に入らない人間を食べたりして殺してしまう凶悪ぶり。見た目の不気味さと相俟ってなかなかの怖さで、双一の存在もちょっと食われているところがある。
実はこの女性、『
闇の声』と『
潰談 新・闇の声』に収録されている双一シリーズのエピソードにも登場している。闇の声に収録されているエピソードは双一少年の将来の姿で、双一がその女性モデルとの間に子どもをもうけるのだが、それが見事に双一と女性モデルをミックスさせたような不気味で獰猛な少年というものだった。もっとも、それは全て双一少年の夢の話だったという、夢オチがつけられているのだが……。
ただ、本作を踏まえて、『闇の声』『新・闇の声』内の双一エピソードを読み直してみると、双一が「男の子」のカリカチュアであったように、恐怖の対象であった女性との間に子どもを作り、女性から逃げ回っては自由気ままを求め、女性に見つかると恐怖に慄き、その度に尻に敷かれる暮らしに戻ってしまうという設定は、「男の子」から続く、「男性」へのテーマ性が見えてきて、より楽しめた。