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ゲゲゲの女房 (映画)

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水木しげるの妻・武良布枝の貧しく厳しい時代に生きた夫婦の姿を綴った自伝エッセイを映画化!お見合いからわずか5日で結婚。昭和36年、出雲の安来から上京した布枝が見たのは、花の東京とは無縁のしげるの底なしの貧乏暮らしだった…。監督は『私は猫ストーカー』で絶大な支持を得た鈴木卓爾。出演者は吹石一恵、宮藤官九郎ほか。

(引用 amazon ゲゲゲの女房 [DVD]


2010年の日本映画。
水木しげるの妻である武良布枝による同名の自伝を映画化した作品。
NHKの連続テレビ小説では布枝役に松下奈緒、茂役に向井理という美男美女の華やかなキャスティングだったのに対して、本作映画版では、布枝役に薄幸な雰囲気漂う吹石一恵、茂役に昭和と貧しさとみすぼらしさの似合う宮藤官九郎で、ビジュアル的には写真で見た実際の水木しげる夫妻にかなり近い。

作品のつくりもNHKドラマと本作映画ではキャスティングの違いが色濃く反映されたものになっている。
NHKドラマが貧しくてもくじけない糟糠の妻のひたむきな姿勢と健気さを、近い将来に待つ成功という既定路線を窺わせながら希望の光で照らす、朝のドラマにふさわしい爽やかなものに仕立てられていたのに対し、本作では陰鬱な貧乏生活の中にまるで人身売買のような格好で放り込まれた主人公布枝のやるせなさを、感情をうまく外に出せない不器用なやりとりの中で垣間見せる表情の変化としぐさに愛情と哀愁を帯びたものを表現しながら、淡々と描き続けている。

そういう暗さのある作品で、昭和のもてない男ともてない女の貧乏暮らしというテーマにおいてはリアリティと迫力があったと思う。そして、その貧乏生活だけが本作では描かれており、ようやく成功の兆しが見えたところで幕を閉じる。
ここが意外だった。ゲゲゲの女房は原作でもNHKドラマでも、貧乏暮らしの時の濃密な夫婦の時間と、水木しげるが漫画家として成功して物質的豊かさを得ると、それと引換えに家族の時間が奪われ、夫婦のすれ違いが起きていくという対比も魅力だったからだ。

成功してからの夫婦を描かなかったのは尺の都合もあったのだろうが、貧乏時代とのわかりやすくて欺瞞に満ちたような対比をしたくなかったなどの理由があるのかもしれない。
だから、貧乏時代だけを迫真にこだわって作ったのか。切り取り方で作品がこんなに変わるという見せ方をしたかったのか。
僕は、成功していない将来をあえて考えさせる作りにしたかったんじゃないかと思った。原作ではどんなに麗しいことを云ってもやはり最終的には成功して富も名誉も得ることが出来ているし、「ゲゲゲの女房」という作品の存在も成功があってこそだ。そこであえて、貧乏生活を苛烈に描いたうえで、あなたはこのまま水木しげるが漫画家として成功せずに貧乏なままでも主人公布枝は幸せだと思いますか、という問いかけをしたかったのではないかと感じた。
その意味で、僕はこの作品に共感した。僕が原作を読んだ時に抱いた感想が、この作品が投げかけるものと同じものだからだ。

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