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読んで遊んで沈んだ記憶

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伊藤潤二恐怖マンガCollection[11] 道のない街 (漫画 伊藤潤二)


伊藤潤二恐怖マンガCollection (11)

『道のない街』『異常接近!』『地図の街』『サイレンの村』『超自然転校生』の5編が収録されている。

表題作になっている『道のない街』は、奇妙な出来事からプライバシーのない生活を余儀なくされた主人公が道のない街に迷い込むという話。
仮面をつけ、自分の全てを隠すことでしか自身の尊厳を守れない息苦しさ、そして、そんな他人の仮面の下に隠された素顔を好奇心のままに覗こうとする人たちのむき出しの狂気が渦巻く街で、何も隠さず一糸まとわぬ姿で全て見せる境地に立った一人の女性との出会いを通し、自分のプライバシーは極端に守ろうとするのに他人のプライバシーはどんな手を使ってでも暴こうとする情報社会(未来)の荒廃した人間模様を示唆しながら、隠すもののない存在の強さと明るさとそして味気なさと、そこの側にもある狂気とを対比させていた。

『異常接近!』は、飛行機の墜落事故を通した怪奇ファンタジーで、幻を見せることで、人が死ぬことの重大さや恐ろしさ、人の持っている思いや念などの見えないものの力について考えさせてくれる作品。

『地図の街』は、地図・案内だらけの街に他所から来た男女が、地図がないと何も出来ない街の人々を出しぬいて隠されていた財宝を手に入れるが、町の人々に追われ、地図を破壊しながら逃げていくうちに、やがて自分たちも地図がないと迷ってばかりで目的の場所までたどり着くことが出来ない人間になってしまうという話で、『道のない街』のように、情報化が進み、ナビゲーションが発達し過ぎると、地図のない場所で生きていけない脆弱な人間になってしまう、あるいは、複雑化した社会の中では、わかりやすい案内がないと人は安心して生きていくことができないということを暗示していたように感じた。

『サイレンの村』は、サイレンを聞くと悪魔化してしまう村人たちの姿を描いた話で、日本の田舎の村を舞台にしているが、西洋系のファンタジー色が強い。ゲームのSIRENシリーズのような設定で、わかりやすいエンターテイメントホラーのテイストになっていた。

『超自然転校生』は、一人の奇妙な転校生によって様々な怪奇現象が起きるという話で、青春群像劇っぽい匂いを漂わせながら超能力バトルなんかが行われたりする。本当の超能力を得たから幸せになれたかというとそうでもないところが皮肉的で、著者の作品らしいともいえるが、特別な力を持ちたいという男たちの体を張った生き様に哀愁が漂っていて、そこが良質な青春の物語として成り立っているのだ。

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