座敷女 (KCデラックス (412))大学生の森ひろしは真夜中に隣部屋のドアがしつこくノックされていることに気づく。自分の部屋のドアを開け覗いてみると、そこにはロングヘアにロングコートの大女が立っていた。後日、その大女はひろしの部屋を訪れる。電話を貸してくれと頼まれたひろしは彼女を玄関に入れてしまう。 その日を境にひろしは「サチコ」と名乗るその大女に付きまとわれる。サチコとは何者なのか?目的は何なのか?サチコの異常な行動は次第にエスカレートしていき、やがてはひろしの周囲の人々をも巻き込んでいく・・・。
(引用 Wikipedia 座敷女)ドラゴンヘッドの望月峯太郎のホラー漫画。
アパートで一人暮らしをする主人公の青年が謎の大女に目をつけられ、つきまとわれていく。
主人公に異常に執着するようになるストーカーの姿とつきまとい行為の理不尽さがベタではあるものの、真に迫る力で訴えかけてくるものがある。
読み手の想像力に委ねた思わせぶりなシーンを多用しながらも地に足をつけて丁寧に展開される構成は、緊迫した場面で最悪の結末を想像させるのに効果的で、実際の漫画展開以上の恐怖心が自然とこみ上げてくる。
主人公とその友人はストーカーの正体を暴こうとするし、撃退しようと躍起になるが、本作ではストーカー「サチコ」の正体はとうとうわからずじまいのまま幕を閉じる。
あえて読者の知りたがっている核心から距離を取りモヤモヤさせてくれる手法はドラゴンヘッドと同様だが、トンネル脱出後のドラゴンヘッドが大風呂敷の広大な世界をぼやけさせたまま観念を取り入れて抽象的なものした結果、まとまりのないグダグダしたものにさせてしまっていたのに比べると、本作はコミックス1巻程度の中編のボリュームで、あくまで謎はストーカーという個の存在に絞られており、展開のさせ方が非常に明快で、終始キレを失っていない。
正体不明の女ストーカー。超人的な身体能力と異様な雰囲気を持つ、その得体のしれなさは無力な一市民から見たストーカーの恐怖を具現しているようであったし、アパートで一人暮らしをする大学生の主人公がストーカーの手に堕ちて世間から姿を消しても、誰もその事を気に留めず、主人公に思いを寄せていたガールフレンドですら平穏な日常生活に当たり前のように戻っているという描写は、如何にも現代の都市伝説が生まれそうな冷たい社会という土壌を見事に恐怖と共に風刺している。