逆境ナイン (1) (サンデーGXコミックス)島本和彦のスポ根ギャグ漫画。
逆境になればなるほど力を発揮することができる主人公率いる全力学園野球部が甲子園優勝を目指す。
昭和チックな古臭さ(懐かしさ)を残しながら表現が垢抜けていて、硬軟巧みに織り交ぜられた独特の絵が島本和彦らしければ、それにぴったりな熱血&ギャグ漫画の作風も如何にも島本和彦らしい。
ストーリーはシナリオ論的というかメタ的というか、少年誌のバトル漫画にありがちな主人公が追い込まれた時に発揮する驚異的な能力で戦況を打開・逆転していくという展開を極端化させ、あまりに非現実的なまでの逆境の場面を作ってみせることで、そこからの逆転劇をギャグとして昇華させている。とことん精神論にこだわり抜くことで逆に皮肉が効いてあるところもコメディとして面白い。
ただ、ストーリーの破天荒ぶりとそれが生み出す伏線の活かし方が、すごく説明的というか、訓話的というか、作者のネタとしての独りよがり的な主張が内向きな話の流れに繋げられているだけでなく、読者のいる外方向にもかなり意識して向けられていて計算に理解を求めてしまっているので、自分的には単純にノリと笑いにちょっとついていけない場面もあった。そういうところも含めて非常にエネルギッシュで熱血な作品である。読むほうにもそれなりの根性が求められると感じた。