バカとボイン 1 (ヤングジャンプコミックス)何をやっても中途半端な浪人生・山田太一は、ある日、大好きなグラビアアイドル・椎名こころのDVD発売記念握手会に向かった。ところが、向い先のビルの屋上から転落した椎名こころとぶつかってしまう。太一は軽傷で済んだが、椎名こころは脳挫傷の重体となり、魂だけの姿(一般人には見えない)で病室の太一に会う。その後、こころの魂を体から切り離そうとする死神がやってきたのだが、太一がこころを死なせないように取引し、こころの死を回避させる代わりに、2人の魂はつながれてしまう。こころを助ける方法を死神から聞いた2人は、想いをこの世に残したままの魂たちを成仏させる生活を始める。
(引用 Wikipedia バカとボイン)『おくさまは女子高生』のこばやしひよこの漫画。
俗に云うパンチラ漫画の類と云えるぐらいに読者サービスシーンのボリュームがあるものの、『おくさまは女子高生』に比べるとエロ要素・性的な描写と刺激はかなり抑えられていて、其の分ストーリーに対するこだわりが感じられるものになっていた。
中途半端で「ダメ」な主人公がグラビアの中のアイドル椎名こころに一目惚れして、アイドルオタクライフに夢中になることで生きがいを得る。そんなオタク主人公が突然ビルの屋上から転落してきた憧れのアイドルこころとぶつかり病院に運ばれるところからストーリーが始まっている。
こころは肉体から魂が離れ、死神から間もなく死ぬと宣告されるものの、主人公の熱意から死神との取引に成功し、主人公とこころはお互いの魂が繋がれた共生関係になり、余命が半年先まで延ばされる。主人公とこころは二人で共同生活をしながら、助かる方法を探す。
物語の導入部だけ読むと、主人公(男)ウハウハストーリー、オタクイズビューティフルの始まり始まりなんだが、先へと進めるとどんどんシビアになっていく作品だった。
オタでメタというか、表面的にはアイドルオタクなありのままの駄目な主人公(男)であり典型的な劣情を、二面性のない無垢で純粋な女性でアイドルという夢のためにがんばっているヒロインが素直に受け入れてくれるというありがちなポルノ漫画でもあるのだが、エピソード毎に主人公を成長させていく物語として構成されており、それまでのアイドルオタクな主人公からアイドルに釣りあう主人公へとステップアップさせようとする試みが施されており、理想の女の子と恋愛したいならオタクはオタクのままじゃ駄目だという厳しいメッセージ性が含まれていた。
主人公とこころの関係とほとんど同じような関係のアイドルオタクとアイドルの対比を別キャラクターにはリアリティを込めて分かりやすく批判的に描いたり、恋愛経験を経て女性との接し方や女性への優しさを弁えるエピソードがあったり、勇気の無さや虚栄心から生まれるごまかし(嘘)を克服するなど様々な人との交流を重ねていく中にありがちなオタク像からの脱却・卒業を意識させるようなテーマが隠されており、なかなか素直にこばやしひよこ先生の描くかわいい女の子にエヘエヘさせてもらえないところがあるので、単純にかわいい女の子目当てで簡単な癒しと慰みを求めた読者には辛いところもあったのではないだろうか。
とはいえ、一つの一つのエピソードは本当に良く練られていると思ったし、ほろっと感動できちゃうところもあり、物語として読み応えがあった。