クロスゲーム (1) (少年サンデーコミックス)主人公はスポーツ用品店・キタムラスポーツの一人息子である樹多村 光(以下「コウ」と記述)。近所のバッティングセンターを営む月島家とは、家族ぐるみの付き合いで、次女で同い年の若葉とは特に親しかったが、その反面三女の青葉とは犬猿の仲だった。
初めは野球に興味がなかったコウだが、青葉の投球フォームを見て憧れ、人知れずトレーニングしていた。そして小5の夏、若葉が突然の事故で亡くなる……。
中学生になったコウは、野球部にこそ所属していなかったがトレーニングは続けていた。そして高校生になり、小学生の頃から親しかった赤石、中西と共に野球部に入部することにしたが、野球部は野球留学生及び選抜テスト合格生による一軍と、それ以外の「プレハブ組」に分かれていた。その選抜テストを受けず、プレハブ組に配属されたコウ達は、夏の地区予選前、一軍VSプレハブ組の試合で惜敗する。
夏休みに入り一軍は甲子園の予選に行くが、プレハブ組は廃校になった小学校で特訓を受ける。そして夏休みも後半になり、校長代理からプレハブ組の解散が命じられると、逆に前野監督はクビを懸けて一軍との再戦を申し入れる。青葉も参戦したその試合でプレハブ組は辛勝し、逆に一軍野球部が解散となり、一軍監督、校長代理、そして東以外の野球留学生は他校へ転校する。
そして春になり、コウ達は2年生、青葉は1年生となる……。
(引用 Wikipedia クロスゲーム)如何にもあだち充といえばのような青春野球漫画。
タッチやH2などあだち充の著名な作品をいくつか読んでいるだけで、一つ一つのエピソードにいちいち既視感があるのだが、その上で楽しめる安定したあだち充節、偉大なるマンネリズム。
ヒロイン青葉の目線で女子の野球挑戦が爽やかに、でもそこに立ちはだかる性差とルールの壁という現実があだち充にしては怖いぐらいシビアに描かれているところが目新しくて面白かったし、この作品の主人公はコウではなくて、青葉なんだなと思った。
だから、結末はどうなっても青葉を中心としたラブコメ模様こそが中心に描かれるのだと、他にどんなに魅力的なキャラクターが登場してもそれを覚悟した。本作はそんな作品だった。勝気でボーイッシュな青葉が男と女の違いを痛感する経験を重ね、異性を意識しだし、亡くなった若葉のことを思いやりながら恋に落ちていく様が爽やかに描かれている。
ただ、恋のライバルキャラとして途中から登場したいとこの男の子や死んだ若葉にそっくりな蕎麦屋の娘などに関するエピソードを魅力的に盛り上げるだけ盛り上げておいて最後までまとめきれておらず、扱いをぞんざいにして強引に舞台から退場させてしまっているなど、キャラクターの扱いに対する雑っぽさが物語を曇らせてしまっている面もあり、作品にハマるほどにお約束の予定調和(カップリング)を素直に喜べなくなってしまうところも。