伊藤潤二恐怖マンガCollection (10)『アイスクリームバス』『仲間の家』『煙草会』『中古レコード』『睡魔の部屋』『贈る人』『あやつり屋敷』の7編が収録されている。短編は全て独立したもので、それぞれの話に関連性はない。
全体的に、風刺を織り込みながらうまく都市伝説がつくられているが、中には、ぐだぐだな展開を話の背景にこだわることで誤魔化しているような印象のエピソードも見られた。
表題作の『あやつり屋敷』は、人形劇を生業にしてきた一家の話で、「人形が操つられているのではなく、実際は人形が遣い手を操っている」という哲学を基に、自身があやつり人形になりきってしまうケースが紹介される。
人形と人形の遣い手、両者は本当に自身の意思で動き、動かしているのか、読者の恐怖と混乱を誘いながら、しかし、人形であることに頼りすぎて、そのことに疑問を抱かずにいると、自身がやがて本当の人形になってしまって自分の足で歩くこともままならなくなるという風刺が利いたエピソードになっていた。シリアスでグロテスクな『ドラえもん のび太とブリキの迷宮』のような感じの作品。
本作が面白くて考えさせてくれるのは、人形を操る側も実は「人形」だったという点だろう。